カスパル・ダビッド・フリードリッヒから手紙を貰ったような気がした。友人からのメッセージである。この詩は、山上の十字架からシュヴァルツヴァルトの山々のあいだに遠く深く谺し、それが心のなかに響いてくるかのようだ。
『無題(或いは仮題「旅人へ」)』
旅人よ。
旅人は迷う。
旅人はためらう。
旅人は恥じらう。
旅人よ。
厚顔たることを怖れよ。
訳知りたることを怖れよ。
旅人よ。
自己という迷宮こそ、その行く先であると想い定めよ。
(フリードリッヒ・M)
自然と静かにしかし深い呼吸をもたらし、身体は楽になった。