そぞろ心が騒ぐ、生暖かさ~ジンマンのマーラー交響曲第10番~
もわっとした気持ちで目覚めた。生暖かい空気に何か夢が続いているかのような錯覚に陥った。
異国で宴席の身仕度していた僕。その隣にいた人は何処に行ったのか。その人のシルエットだけは瞼の奥にしっかりと残っている。或るボランティア活動をしていた僕はそれを続けられたのか。記憶の糸はだんだんと細かく裂け融解していく。あそこにいた僕は今の僕なのか。
このいまの感覚にちょうど合っている曲を聴いている。アダージョからいきなり始まる交響曲。たゆたい、ときおり淀みそして融けていくような記憶の流れ。そこに身をまかせる感覚。ひとつひとつの想いがフェードインして現れそして別の記憶が重なっていくる。まどろむようなマーラーの第10番だ。デビッド・ジンマン指揮/チューリッヒトーンハレ管弦楽団。友人お薦めの一枚である。
■マーラー:交響曲第10番嬰ヘ長調[カーペンター版]
演奏:デビッド・ジンマン指揮、チューリッヒトーンハレ管弦楽団
録音:2010.2.1-3、トーンハレ、チューリッヒ、スイス
音盤:Sony Music (RCA Red Seal) 88697 76896 2