元旦に読み終えた本が、自分には合わないもので、ひどくしょげていた。どうしたものかと思ったが、ままよ、と書評の本に(また)手を出した。『三四郎はそれから門を出た』(三浦しをん著、ポプラ社)。三浦さんの小説は、僕の性に合うから、彼女の薦める本は合うかもしれぬ、と思ったからだ。
書評とエッセイが半々のような本だった。エッセイの中には、声をあげて笑ってしまうものや、自然とにやにやしてしまうものもいくつかある。ひと癖、ひと捻りあるユーモアものだ。次々にページを繰りたくなる。エッセイも洒脱やなぁと思わずひとりうなづいてしまう。この人がどれだけ本好きなのか、ということもにじみ出し出ている。どのような種類にも好奇心があり、彼女が書く小説からは想像できないようなジャンルまで冒険している。
しかし、だ。よさそうな本はあったかというと、結論は、「なかなか無かった」。この本のなかで彼女が紹介した何十冊ものなかで、何冊読んでいたかと言えば、丸山健二の『水の家族』(文芸春秋)くらいであり、それも以前何かの雑誌で、(やはり)彼女がマイベストのなかに挙げていたから読んでみたにすぎない。
僕とは異なる性、異なる生き方、異なる生活、異なる趣味趣向、そしてもちろん異なる職業なのだから、だいたいにおいて、これはぴったりだ、と無条件でもろ手を上げて信じられるものが、そうは易々とあるはずがない。
人に頼ったりして楽して本を探そうとしてはならぬのだな、ということを改めて悟った一冊だった。