小雑誌が好きである。内容はフォーカスが絞り切られており、読者層が明確に想定されており、ローカルねた故のマニア度が好感である。
そのひとつが、『酒とつまみ』(酒とつまみ編集部刊)。
『酒飲みの自己弁護』、という本を書いた人もいたわけだが、その例にもれず、はじめからおわりまで、酒についての談議や小説、酒紹介、つまみの極意、居酒屋訪問記、酒飲み川柳などなど、すべてが酒についての話題である。
そして、『九段界隈 桜みち』(国分生活研究室編、WAVE出版刊)。
この雑誌は、千鳥が淵の花見の時期に合わせて刊行されていたが、最近刊行が休止されてしまった。とても惜しい。九段界隈の桜の名所、食べ処、街角探検が主体である。編集者やそれを囲む人々の熱意、気配りのかずかずが素晴らしい。
最後が、『相鉄瓦版』(相模鉄道刊)。
僕は、就職して神奈川県に初めて引っ越したのだが、大都会横浜に乗り入れていながら、終点はとてものんびりした風情の海老名に到着する、このローカル路線に魅せられた。そこが季節ごとに刊行するのが、この冊子である。路線ゆかりの歴史や風物、店の紹介、小話コラムなど、この領域に住んでいて初めて知りたいと思うものごとが、さりげなく記されている。
そういえば、僕の友人は、『書生』という同人誌を発行していて、そこにいくつかの小篇を載せていた。あのような冊子、いま、とても懐かしく思う。
切り取られたような小さな世界。しかしそれは、小さいからこそに、深淵を持ち、そのなかに、さまざまな思いや、気持ちや、情愛や、共感がこめられていくのだと思う。
今日はこれから、そういった小雑誌、小冊子を、きちんと取り扱っている神保町の書店に足を運ぶ。何冊か、小宇宙への旅の切符を手に入れよう。
相鉄瓦版はこちら
→http://www.sotetsu-group.co.jp/kawaraban/default.htm