僕はショパンを見くびっていた・・・ルービンシュタインの夜想曲
あの、
ルービンシュタインによる、ワルツ集に驚いて以来、どのように聴いていこうかと思いあぐねていた。
ブログで知ったかたが推していたこの夜想曲を、試してみた。1965年8-9月,1967年2月の録音。またも、驚かされた。
第1番 変ロ短調、第2番 変ホ長調。のっけから凄い。淡々と、あるがままに、くどさの皆無な音の流れだ。
第4番 ヘ長調。途中で曲想がかわる部分でも、悪戯に気合いを込めるのではない。
第13番 ハ短調。ロマンという感情に崩れそうな崖っぷちで、何とかこらえながら、ショパンに語らせる絶妙。大伽藍と感情のせめぎあい。
第14番 嬰ヘ短調。前の曲で感情が走ったことを、少し恥ずかしいと思っているような、抑制美に溢れる。
このピアニストは、情熱とか、悲哀とかいう世界とは全く違う観点から、ショパンを、見せてくれる。ショパンが残した音魂がただそこにある、という感じだ。装飾や、もっちりした感情移入は、ほとんどない。
彼の前に、僕のショパン像は、どんどん、どんどん、変容する。吐息が出て、そして、深い安堵感に包まれる。
僕は、ショパンを見くびっていた。
追伸:先週は、欧州はポーランドでも猛暑だったそうだ。テレビでは、ウッチという都市で40℃を超えたことを伝えていた。ルービンシュタインが生まれた町だ。そんなことだけでも、想う心の何かが、敏感に反応するいまである。