物事を、深く深く考えられている小林秀雄さんの講演に、耳を傾けていると、良い絵画や音楽に触れているときのように、極く自然に、発想が豊かになってくる。感覚が鋭くなる。
小林秀雄講演集(CD)・第8巻の1「宣長の学問」(新潮社刊)
例えば、次のようなこと。
『伊藤仁斎が、「論語」について注釈を書くのに、50年の間、"最上至極宇宙第一"と、書こうか書くまいか、書いたり消したり、消したり書いたりしていた、その気持ちを想像しなければならない。
本との付き合い方は、熟読、精読であり、あの時代の本ということの意味は、現在とはまるきり違う。反復、体吟。それにより、上っ面の意味だけでなく、孔子のはらわた、声咳まで分かったのだろうな。』
表層で、ものごとを、分かった気になっているようでは、いけないのだ。