アンネ・ゾフィー・ムターさんの日本公演が、今日から始まっている。なのに、どうも、仕事などでタイミングが合わないばかりか、聴きたい公演のチケットも完売になっている。どうしたものか。
仕方がなく、今日は、DVDで、彼女のベートーベンのバイオリンソナタ全集を聴きとおした。第1番~第10番。1998年、シャンゼリゼ劇場でのライヴ録画。例の、人魚服にも身を包んでのもので、みどころ満載である。パリの夜のしじまの風景とともに、このDVDは始まるのだが、その、ちょっと、暑苦しく、重い街の喧騒に、まわりは包まれながら、ホールのなかは別世界で、「豊饒の海」の一幕のような雰囲気に満たされている。
第1番の若々しさから始まり、だんだんと、成長していくベートーベン。シンフォニーとは作曲ペースが異なり、第9番で作品47。最後の第10番が、一挙に飛んで作品96。その、どれもが心に響くが、やはり第9番イ長調作品47 「クロイツエル」 が、じんわりとくる。
このDVD、これに加えて、"A Life with Beethoven"(ライナー・E・モリッツ監督)という、ムターさんによるベートーベンの音楽にまつわる語り、回顧録が入っており、それがとても、興味深い。カラヤンと競演したときの、至らなさのことも述懐する(幼さも残る素直な顔立ちの映像が挟み込まれ、それはそれでドッキリと来るが)。いまとなっては、まるで"家族のアルバム"を眺めるような成熟していないときだ、と言い放っている。
近くで遠い、ムターさん。
ああ、でも、もしかすると、先週からのアイスランドの火山噴火のおかげで、日本にもっと長く留まってくれるかもしれない。そうすれば、演奏への出会いのチャンスができるかもしれないなあ・・・・。
災い転じて福となれ。