今朝の朝日新聞の「読書」欄で、社会現象となった村上春樹さんの『1Q84』が、日販、トーハンとも年間ランキングで総合1位を獲得した、とありました。第1巻が123万部、第2巻が101万部は売れたそうで、確かにそういう数字的には素晴らしいのだろうな、と思いました。
でも、僕としては、この数字が、内容への賛同や作品の質の高さと一致している、と評価されてしまわないか、と危惧しているし、それについては異論がある。敢えていま、そう言いたいと思います。そう言っておきたい。
出版されてすぐ、とても大きな期待のうちに、自分はこの書を取り寄せ、一気呵成に読み通しました。なんとか読み通し、読み終えて、何もいう気もしない、何も残らなかった。世間受けそうな事象(トレンディーっぽいことも)を散りばめて、ちょっと誤魔化しすぎている。村上さんの本を80年代初頭から折に触れ読んできましたが、それらに比べると普通すぎる。
なぜか、新聞雑誌では、もてはやされていましたが、僕は、それにあらがう気持ちが失せるほどに白けてしまっており、そこに言及することも、したくなく、あえて黙ってやりすごしていました。語るのも、自分がつまらない存在になると思ったのです。
そして、それゆえに、人には一切、お奨めもしませんでした。
村上さんとしての小説の心境地、だなんていうことは、おこがましいし、本人も、そうは思っていなのいだろう、と思っています(違っていたら本当に申し訳ないですが)。そしてまた、このような評判になることは、世の中が画一的すぎるようで、なんだかおかしい。総選挙で政局の大幅転換が、いともたやすくおきたような感じに似通っている・・・。
いえいえ、村上さんとしては、そういう風になってしまっているこのご時世に異論を投じたく、そういう意味で現代の膠着さを語りたい、そういう時代小説が「1Q84」なのである、ということであれば、それはそれで良いのですが。
僕は、村上さんには、もっともっと、挑戦的なものを期待している。小説家はそうであってほしいと念じています。