昨日は、急遽、縁あって(幸運なことに)、ベートーベンの第九交響曲を聴きに行くことができました。オンドレイ・レナウトさんが指揮する、東京フィルハーモニー。
東京フィルを耳にするのは久しぶりなのですが、感心したことは、弦楽がふくよかで厚みがあり響き豊かであること。音量もある(マスがある)。そして統制がとれている。
第2楽章は、どうしても、僕の友人がいうところの「リズムの喜びに満ちた神々の踊りの音楽」(オットー・クレンペラーによる第九のこと)を期待してしまうが、レナウトさんの指揮はそうではなく、端正な折り目正しい、格調の世界。
第4楽章の、例の、いくつかの旋律をとまどいながら奏で、たしなめられ、やがて協和していくところ、コントラバスの深い響きは絶品でした。
声楽ソリストのほうは、笛田博昭さんというテノールが、痛快アッケラカンで心地よかった~。若さ爆発、エーイこれでどーだー、オレはオレのやり方で歌い放つさ~、という感じ。「由緒正しいこの場所でその歌い方はナニ?」と言われそうなぎりぎりの豪快さ。
そして、合唱。これは僕はこれまで聞いた合唱のなかで一番上手でとても感心しました。「東京オペラシンガーズ」という団体なのですが、小澤征爾によって組織されたものだそうで、若々しくしかし豊かな声量のコーラス。元気一杯。
レナウトさん、汗一杯で完了しました。
そして僕は思いました。ベートーベンの故郷から目と鼻の先のスロバキアに育った彼が、こんなに遠く離れた極東の異文化の地で、この東洋の地のメトロポリスと墨絵と複合カルチャーの地で、正統的な第九を振ることができる不可思議さに感じ入っているのではないか、と。
追伸:
今回の第九、スコアがふつうとすこし違うように感じました。特に第4楽章の後半のトロンボーンがメインに出てくるようなくだり。どういう版なのだろうかなあ、と思いました。