飛行機がゆっくりと着陸体制にはいる。パイロットはベテラン。滑走路に無事車輪が触れる。タイヤが擦れる。
と、みるまに飛行機が左に傾き始めた。なぜ?ふとパイロットのことを頭に思い浮べる。パイロットもなぜなのか?と、頭に不思議がよぎる。ゲームなのか?次の瞬間にぐわんと綺麗に、スローモーションを見るかのように裏返しになって滑走路の左側の芝生地帯に止まった。
空港の化学消防車が、エンジン部分に、出火予防の意味でアワアワの液を掛けはじめた。
僕らは助かった。座席で宙吊りのようになっていたが、エンジン音も消え、静かな、でもそこはかとなく、空気は不安な振動を伴っている。
皆はもぞもぞと動き始め、ぼくは脱出避難を指揮する。フライトアテンダントの方々と話ながら、頭の上にあった非常口を開けて、皆を持ち上げ、誘導する。外にでたら、胴体にそってするすると下に降りて、とか叫んでいる。
最後に外にでた。全員が無事に脱出。
夕日を浴びた機体が綺麗に輝いている。
何故か、ベルク、ヴェーベルン、シェーンベルクのビアノ曲が鳴っている。グレン・グールドの演奏。