いまの自分の沈みきった身と心に、モーツァルトのバイオリンソナタが痛いほどに染みる。
第28番ホ短調K304。寂寞の夜の草原を前に、じぶんで進むべき方角を定めかねているさすらい人のようだ。アンネ・ゾフィー・ムターの情念込められた、吐息のようにかすれた音色。さびしい弱々しさと、覚醒し凛と張り詰めた確固たる精神がバランスしている。
第33番ヘ長調K377。これは第二楽章が、沈降した静けさと悟りを語り掛けるよう。ひとのため息のような、つぶやく悩みの心が、こねくりまわされていく。
第34番変ロ長調K378。明るすぎて、心に入らない。呑気で良いね、浮かれポンチ君(と悪口吐く)。自分の気持ちと異なるものを、受容することすら出来なくなりつつある。