奥田英朗さんの「オリンピックの身代金」、昨晩読了。
会社の友人が「お薦め」、とポンと机に置いていったものですが、良かった。
昭和39年の夏。じりじりとした焦燥、わくわくした世界の祭典を待つ人々、どんどんと変わりゆく街。
ストーリーの奇抜さにも感じ入るが、ぼくにはこういった郷愁が記憶が蘇ることが心地よかった。
この年、五歳だった僕の記憶。
名神高速道路が開通したワクワク感。新幹線が開通した月に乗り、スピード感よりも、車両間連結器が怖くてなかなか隣の車両に移れなかったこと(0系の初めは連結器上の床がぐにゃぐにゃ動いた)。そしてオリンピックはチャフラフスカの妖艶な体操や三宅の重量挙げ。
経済効率や成長に向けて皆が怒涛のように集中した時代が残した現在の日本に、これで良かったのか、という問いかけもしているような小説だった。心地よさが残った。